釵(さい)

 ニンジャタートルズの赤い鉢巻き(マスク?)の人が使ってるアレです。
琉球古武術などをはじめ日本では割と知られている武具ではないでしょうか、マイナーのなかのメジャーといった感じかな。

 画像の釵は練習用にSWT工房さんに製作していただいたものです、

 まず、通常の釵は先が尖ってますが、この釵は練習用なので丸くしてもらいました、室内でも気軽にふれます、
実際は投擲して刺したりしますので尖っていたほうがいいんですが、あくまでも練習用なんで、物壊したり、怪我したりしないように。

 次にバランスです、逆手持ちにして指に引っ掛けたとき若干、物打ち側が下がる程度、つまり腕に添う程度の傾きです。
この重心がほんとによくて回していて気持ちいい、市販品の多くは先が重すぎるのが多いですね。
いろいろ打ち合わせして製作していただいたおかげです。

 長さは市販の多くのものと比べて長くなっています、物打ちは370mmとなっており肘から2〜3cmほど飛び出す長さです、
回すには短いほうがやりやすいわけですが、肘打ちの感覚をやしなうためにも適正な長さにしておきたかったのが理由です。

 柄も長く作ってあります、これは回した時見栄えがするからというだけの話ですが、それも重要な要素です。
柄の紐巻きはパラシュートコード製です、250kgの張力にも耐える優れもので、ナイフなどの柄巻きなんかにもよくされています。

 そして材質がなんといってもステンレスSUS304で出来てるのが最大の魅力でしょうか、強靭で錆びません。
市販品のほとんどが亜鉛合金製です、黒塗りしてあるものとクロムメッキしてあるものがでまわっています、演舞だけなら別段
問題はないのですが、本気で打ち合うと曲がってしまうんですよね、かといって本職が鍛えた鉄製はお値段もかなりしますし、
錆びますしね、で、ステンレスとなったわけです(SWT工房さんいつもお世話になっております)。 

 最後に柄頭にリングがついてます、普通逆手にもって柄頭で突くんでここにこんなリングは邪魔なんでついている釵は基本的に
ありません、でもなんでついているかというと回しているとき音がして楽しいということでついてます、ここ意外と重要です(笑)、
なんせ練習用ですから、一人でグルグル回している時が大半です、そのとき少しでも気分良くまわせるのがいかに大切か。
またリングついてると収納も壁掛けやS字フックなどでそこらへんにかけられて非常に便利です。
だいたい曲っちゃう亜鉛合金製の釵で突きの練習は散々したんで本気で何かに突き込む事もないのではないでしょうか、もうブロックとか突きませんしね。


パラコードを巻き直したものです。イメチェンです。

3本目の釵です、投擲用で先が尖ってます、そして目標に刺さり安いように、房をパラコードで編んであります。
古流の形だと、投擲して背中に挟んでおいた予備を取り出すといった所作があります。
重いのでびっくりするぐらいの威力で刺さります。

 逆手持ちから本手持ちに振り出しているところです。
静止画を撮るため若干ぎこちないですが大目にみてやってください。
収めるときはこの逆で内受けの形に巻き込むとキレイに早く収めることができます。
振り出すときは手首でやらず、釵を動かすのではなく身体ごと釵の柄を取りにいくと確実に振り出すことができます。

基 本的にはこの振り方さえ出来ればあとは体術と組み合わせるだけです。あまり指離れするような振りは武器の取り落としを
招きますので実戦的には問題があります。

 この釵という武器はどんな使い方をするのでしょう、私見ですがご紹介します。

@引っ掛ける
A刺す
Bたたく(打つ)
C突く
D受ける

 と、こんなところでしょうか。一つずつ解説をしていきます。
まず@の引っ掛けるです、横についているカギの部分で引っ掛けます
このカギの部分を翼(よく)といいます。
ここで腕や肩、首、眼窩、口、膝などあらゆるところを引っ掛けます、まさにこれこそが釵の特徴といえます。
私の釵は柄が長くできていますので柄でも掛けることは可能です。

 A刺すです、そのまま先端を刺すという使い方以外に、真ん中の棒(物打ちといいます)をガイドラインにして
翼の部分を刺すという使い方もあります、眼窩、喉、口、脇、肋骨、腕、足などです。

 B打つですが、先端が尖った従来の釵ならば打つと先端部分により皮膚、肉が裂けます、力が集中するので頭蓋を陥没させるほど
の威力がでます。
ただし、武具としての重さと長さは他の長い武器に比べてありませんのでそういう武器、たとえば刀などとの打ち合い
には向きません、よく、相対練習などで打ち合っているものをみますが、現実的に斬撃をもっとも力ののった所で受ける
ことは同じ技量のものなら不可能だといえるでしょう。

 Cの突くです、柄頭で突くわけですが、あまり硬いものを突きこむと翼があたっている部分から血がでます(爆)。
そういった場合どうするかというと打撃の用法と一緒で当たったその時に集中するような力の使い方をします。
実際、コンクリートブロックなどを砕く練習などをすると身につきやすいとおもいます。

 Dの受けるですが、Bの打つでもいったように力のある一撃をまともにうけるだけの防御力はありません、
ねじり、弾きといった基本的な動作をすればそれでも幾分かはうけれますが、斬鉄できるほどの技量の相手なら
手首から先はないとおもっていいでしょう。
 釵だけでなく、トンファーなどの一見うけれそうな武具でさえそれは一緒です、基本的に体術の延長なのです、
他流ではどうかはわかりませんが、受けはまともに受けてはいけないのです、そしてそれは攻撃の一環でなければ
受ける意味はありません、つまり受けのための受けは意味がないのです、入り身しながら攻撃の元、手首や武器の
根元、体幹、体軸を押さえ、または流しにいって崩し居着かせなくてはいみがありません(複雑すぎてうまくいえませんが)。
こちらが一方的に攻撃できる局面をつくりだす素手での受けとなんら用法はかわりません。
 逆説的にいうと素手でできなければ、これらの武具を用いての受けはあまりおすすめできません。
素手より若干安心といったところです。
その上ではじめて翼を使って指をしごき落としたり、刃物の横っ面をたたいたりといったテクニックが存在します。
これらの技はこちらが一方的に攻撃できる局面を作り出すことが出来てはじめてなりたちます。


 武器術としての汎用性はないに等しいかもしれません、釵を携行することは日本では難しく、
似たような何かを手にしたときにはうまく扱えるかもしれませんが…、あえてゆうなら、

十字型のなにかを手にしたときは器用にあつかえることができます(十字レンチとか…本手も逆手も一緒だけど…)。

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